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「私の家族に限って絶対にもめないから」、「相続の希望はないし、法律どおり分けてくれればいい」、「必要なのは分るが、具体的に何をすれば…」、「自分にはもめるような財産はないから」、「私はまだまだ若いので、遺言作成は後で」
このようなお声を聞くことは大変多いです。しかし、本当にそうでしょうか?
実際私が現場お聞きする相続人の声は、全く逆です。
このような声に代表されるよう、遺言ないばかりに、思いもよらない結果になることは少なくありません。
相続する財産を一円でも多く貰いたいと思うのは、相続人とって自然な思いです。仲の良い家族であっても、その配偶者などの思惑などで、思いもよらない争いになることもあります。
もし、遺言を残しておけば、相続人間での争いもなかったかもしれませんし、財産を本当に残したい人に渡すこともできます。また、家族から遺言を作成して欲しいとは、言いづらいものです。
遺言を作成することは、残された家族に対する最後の愛情でもあり、残された家族への責務だと思います。
下記グラフのように、公正証書による遺言作成件数は増加しております。
平成元年には約4万1千件であったものが、平成26年には10万件と突破しました。
※出典:公証役場HP
遺言には、大きく分けて普通方式遺言と特別方式遺言があります。普通方式は、さらに自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三つに分けられます。
特別方式は、危急時遺言、隔絶地遺言の二つに分けられます。
種類 |
遺言のできる者 |
証人 |
方式 |
|
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危急時遺言 | 一般危急時遺言 | 疾病その他の自由によって死亡の危急に迫った者 | 証人3人以上 | ① 証人の1人に遺言の趣旨を口述 ② 口述を受けた者が筆記し、遺言者および他の証人に読み聞かせ、または閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを証人 ③ 各証人が署名、押印 |
難船危急時遺言 | 船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者 | 証人2人以上 | ① 証人が、その趣旨を筆記 ② 証人が署名、押印 |
|
隔絶地遺言 | 伝染病隔離者遺言 | 伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所に在る者 | ・警察官1人以上 ・証人1人以上 |
遺言を作ることができる(他人に代筆させることもできる) |
在船者遺言 | 船舶中に在る者 | ・船長または事務員1人 ・証人2人以上 |
遺言を作ることができる(他人に代筆させることもできる) |
メリット | ○手軽でいつでもどこでも書ける |
○家庭裁判所での検認手続が不要 |
デメリット | ●不明確な内容になりがち(=将来の紛争可能性) |
●費用がかかる |
良くも悪くも、
遺言は、撤回や破棄をすることができます。
(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第千二十四条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
遺言が自由に撤回や破棄できてしまうと、遺産を承継する予定の人が困る場合があります。
例えば、親に自分がある特定財産を相続するように遺言を作成してもらったのに、親が亡くなる直前に他の子どもにそそのかされ、遺言を撤回し、他の子どもにその特定財産を相続させる旨の遺言書を作成させれる可能性があります。
また、遺言はいつでも撤回ができてしまうため、財産を相続する人は常に不安定の地位にあるといえます。
そのようなリスクがある場合、信託を活用すると安心です。
信託について詳しくはこちら
遺言と違い信託は、
「財産を承継する人の承諾がなければ、財産を承継する人を変更できない」
と規程することができます。
(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)
第九十条 次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一 委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
二 委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
2 前項第二号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
改正民法968条2項 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
なお、本法律の改正は、平成31年1月13日から施行されます。
※下記のいずれかを管轄する法務局が遺言書保管所となります
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地
※遺言者死亡時に、法務局から指定の者に「遺言書を保管している旨」の通知希望も可能。
必ず本人自ら法務局に行く必要があります。
【申請時必要書類】
・遺言書(封はしない)
・申請書
・本籍の記載のある住民票の写し等(作成後3か月以内)
・本人確認書類(運転免許証・運転経歴証明書・マイナンバーカード等)
・手数料(1通につき3,900円)
・相続人
・受遺者等
・遺言執行者等
・上記の親権者、成年後見人等の法定代理人
申請した法務局でなくとも、全国の遺言書保管所と定められた法務局であれば、どこでも交付請求可能
【交付請求時必要書類】
・遺言者(死亡者)の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票の写し(作成後3か月以内)
・手数料(1通につき1,400円)
【受遺者、遺言執行者等が請求する場合】
・請求人の住民票の写し
【請求人が法人の場合】
・法人の代表者事項証明書(作成後3か月以内)
【法定代理人が請求する場合】
・戸籍謄本(親権者)、登記事項証明書(後見人等)(作成後3か月以内)
【窓口請求の場合】
運転免許証等で本人確認いたします。
【送付請求の場合】
請求人の住所宛てに送付されます。
・相続人等が遺言書情報証明書の閲覧又は交付を受けると、法務局はその方以外の相続人等(遺言執行者・受遺者等)に対して、「遺言書を保管している旨」を通知します。
・遺言者が遺言書を法務局に保管申請した時点で、遺言死亡時に法務局から指定の者に「遺言書を保管している旨」の通知を希望していた場合も、当該の者へ通知されます。
公正証書遺言 |
法務局遺言書保管制度 |
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作成時の手間 | 原案の作成は必要となるが、最終的に公証役場が作成する遺言書に署名押印すればよい。 |
遺言書及び申請書等、全て本人が作成する必要がある。 |
作成時実費 | 最低約2万円~ |
3,900円~ |
遺言者死亡時の遺言書受領 | 遺言作成段階で遺言書正本及び謄本が渡される為、遺言書の受領は不要。 ※正本及び謄本の効力は同様 謄本の再発行は可能。 |
法務局で請求が必要。 ※請求の際、「遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本」及び「相続人全員の戸籍謄本及び住民票」が必要。 ※1通につき1,400円必要 |
相続人等への通知 | なし ※遺言執行者は、相続財産の目録を相続人へ交付が必要。(民法1011条) |
法務局へ遺言書の閲覧・交付請求した場合、相続人等へ「遺言書が保管している旨」の通知がなされる。 |
遺言の検認 | 不要 |
不要 |
法務局遺言保管制度は、実費が大変安くなります。
しかし、遺言内容の実行の際に、手間暇及び費用がかかるため、当事務所では公正証書遺言をお勧めしております。